新型コロナウィルス感染症で亡くなられた方のお葬式について
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は2019年12月に中国の武漢市での第一感染者が認められ、そこから急速に全世界へと蔓延(パンデミック)したのは皆様ご存じかと思います。
とにかく感染力が高く、その段階では特効薬やワクチンも存在せず、世界中で話題となっています。
葬儀業界では2023年に入り、新型コロナウィルス感染症で亡くなられた患者への対応の緩和がされており、従来通りの葬儀告別式が可能とされておりますが実際はどうなのか?葬儀の流れもコロナ禍以前のような流れになるのか?葬儀費用は高いのか?についてこちらでご紹介させて頂きますが、地域により異なる部分もありますので私の経験と個人的な意見ということを前提にご覧頂ければと存じます。
以前よりどのような緩和が行われているか?
こちらは「納体袋(のうたいぶくろ)」といい、ご遺体を納めるポリエステルや布製の袋になります。
以前では納体袋に納めての葬儀が義務化(推奨)されておりましたが、厚生労働省と経済産業省は2023年1月6日に「納体袋」の使用を不要とするというコロナ患者の故人様に対しての対応を大幅に緩和しております。
厚生労働省と経済産業省は6日、新型コロナウイルス感染症で亡くなった人の遺体の処置や葬儀に関する指針の改定版を公表し、自治体に通知した。遺体を包む「納体袋」を不要とするなど制限を大幅に緩和した。コロナ以外の死亡者と同様に、故人に触れて最後の別れを告げることが可能となる。
引用元:読売新聞オンライン
改定前 | 改定後 | |
納体袋への収納 | 推奨する | 原則不要 |
ご遺体への接触 | 控える | ご遺体に触れた場合手指の消毒を実施 |
通夜式・葬儀式 | お葬式を行うかどうか遺族と相談 | 執り行える |
というふうに、きちんと対策を行えば従来通りの葬儀を行っても問題ないとされています。
対策というのは、ご遺体の口や鼻・耳・お尻などから体液の漏出を防ぐための処置を行い、ご遺体に触れた場合はきちんと手指の消毒を行い、ご遺体に損傷などがある場合は接触を控え取扱いに注意するということになります。
なぜ新型コロナウィルス感染症の葬儀に対して大幅に緩和されたかというと、ご遺族の声によるものだとされています。
病院でも面会できず、葬儀でも拝顔や最期のお別れができず非常に辛かった。。。
という声があまりに多くみられたからとされております。
緩和前の葬儀はどんな形式で行われていたかというと、大半は「骨葬」というケースでお葬式を行っている葬儀社が多かったとされています。
「骨葬(こつそう)」とは・・・ご遺体を火葬し、ご遺骨を祭壇に飾り寺院などを呼んでお葬式を行うことをいいます。宗教者によっては通夜式は行わず葬儀式のみ行うことが多くみられました。
もちろん、ご遺体の処置を行い透明の納体袋に納め、お棺のフタなどに目張りを行い通常通りの通夜式・葬儀式を行っているケースも少なからずありました。
緩和前の火葬場(斎場)の状況はというと、
- ご遺族であっても入場は認めない
- 入場人数の制限
- 濃厚接触者は入場不可
- お骨上げも立ち合いできない
など斎場によってさまざまなルールが定められており、また「コロナ枠」と呼ばれる新型コロナウィルス感染症で亡くなられた方専用の火葬の時間帯がありました。
通常の火葬時間は午前10時~午後2時という時間帯が一般的ですが、コロナ枠は午後3時以降であったり、中には午後6時に火葬を行い午後10時にお骨上げという斎場もあったりします。
既に制限の緩和を受け入れている葬儀社や斎場もありますが、まだまだ制限やルールが厳しいというケースもあるのが現状であったりします。
旅行先の旅館やホテルにおいて、直近のPCR検査陰性結果やワクチン接種の証拠を提示することにより、割引が受けられるところもあったりしますので他業種においても緩和や対策が色々となされております。
制限緩和に対しての考え
制限の緩和の理由として、ご遺族の声以外に「遺体からの感染率が極めて低いとの最新の知見に基づいて改定した。」とあります。
緩和に対して速やかに対応している葬儀社や斎場もあれば、新型コロナウィルス感染症が完全に終息するまではまだまだ油断できないというところもあります。
緩和=行ってもよい(不要)ということであり、通常通りに戻さなければならないということではありません。
また「感染率が極めて低い」=極めて低い確率で新型コロナウィルスに感染する可能性があるともいえます。
こういうことから、通常通りの葬儀や火葬を行うことに関してはそれぞれの葬儀社や斎場の代表者の考えによるものとなります。
どちらが正しいかというのは現段階では決めたりはできませんが、日本全国的に緩和に対しての考えが広まっていけば全国の葬儀社や斎場でも通常通りの形式が普及するといえます。
実際に新型コロナウィルス感染症で家族が亡くなった場合は?
葬儀社に連絡を入れるのですが、亡くなられた方が新型コロナウィルス感染症が陽性であることは伝えておきましょう。
だいたいの場合はご遺族からの報告があったり、病院の看護師さんが電話で状況報告があったりとしますが、病院によっては防護服やフェイスシールドを着用していないとご遺体が安置されている病室に行けなかったり、霊柩車(寝台車)に乗せることができないケースが多いです。
そして搬送となるのですが、現状では新型コロナウィルス感染症が陽性であれば葬儀会館に安置できなかったり、病院でお棺に納めて拝顔やお別れができないケースがあります。
PCR検査は一度陽性になるとその後1ヶ月間は陽性に出続けます(平均20日間)が、発症日より10日間経過すればすでに感染性はなく、日常生活や仕事への復帰が可能です。
コロナウイルス感染症から治癒したことを証明するために、PCR検査を受けて陰性を確認することは必要ありません。
引用元:TOKYO BUSINESS CLINIC
とはありますが、葬儀社の考えによりさまざまであったりします。
どのような形式でお葬式を行いのかを決めていないと、思っている葬儀とはかけ離れてしまう可能性がありますので要注意です。
しかし、亡くなられて頭が回らない中、お葬式の内容なんて考える余裕はないと思います。
もし、新型コロナウィルス感染症が陽性であり、かつ余命宣告において数日中で亡くなられる可能性がある場合は、葬儀社に一報を入れ事前相談を行うことがよいといえます。
現状では緩和がされておりますが、決まっている葬儀社があったとしても通常通りのお葬式が行えない可能性があるからです。
「骨葬」という形式で葬儀を行えるところは大半ですが、葬儀社によっては新型コロナウィルス感染症で亡くなられた患者さんを一切受け付けていないというところもあったりします。
やはり、会社でクラスターが起こってしまった場合の風評被害を避けたいという考えも十分に理解できますので、どれが良い悪いというのはありません。
大手葬儀社であればあるほど新型コロナウィルス感染症のクラスターが起きてしまった場合ダメージは大きいので「骨葬」という形式を取るところがおおいような気がします。
昨今ではSNSの普及により特に「悪い噂」というものは一気に全国に拡散される傾向にあります。
葬儀社に完全に任せるという場合は問題ありませんが「通常通りのお葬式を行いたい」という場合は事前に確認しておかないと難しいのが現状だともいえます。
万が一、決まっている葬儀社が新型コロナウィルス感染症の方の受け入れを行っていない場合は他の親戚や知人などに紹介してもらうか、インターネットで葬儀社を調べその旨を伝えましょう。
新型コロナウィルス感染症が陽性ということを隠していてもバレないのか?
亡くなられた場合、上記の書類(死亡診断書)を病院や施設などから受け取ることになりますが右側の欄に
- 新型コロナウィルス感染症陽性
- PCR検査陽性
- COVID-19陽性
などと記載されているケースが多いです。
一般的にはご遺体の搬送スタッフが死亡診断書を預かったり、役所への手続きなども葬儀社が代行するケースが多く、個人情報とはいえご遺体に直接触れ処置を行うため病気の内容などを確認したりします。
新型コロナウィルス感染症だけに関わらず、肝炎やHIV(エイズ)など感染してしまうと生死に関わる可能性がありますので、全く確認しないというのは無理ですよね。
また、病院にお迎えに行き通常の服装で行くと止められるケースもありますので、葬儀社に黙っておくというのは辞めておいた方がよいですし、すぐに分かってしまいます。
新型コロナウィルス感染症の葬儀費用はやはり高いのか?
葬儀社によって全然違います。
中には通常料金の所もありますが、「ご遺体の搬送」「ご遺体の処置」など全てにおいて感染のリスクがあります。
そして、防護服の費用もかかってきます。
防護服の費用はしれており、Amazonなんかで見ると500円~3,000円程度となりますが、新型コロナウィルス感染症患者を取り扱えるスタッフが会社により限られます。
ぶっちゃけた話、リスクがある分特別手当てを支払わないと誰も業務を行いません。
個人事業で自分たちで葬儀を行っている会社や、よほど志の強いスタッフなどはそうでなかったりもしますが、費用については通常よりも高くなってしまうということは頭に入れておいた方がよいかもしれません。
どれくらい高くなるのか・・・?
については葬儀社によって違いますので何ともいえません。
通常料金の場合もありますし、2倍(100万円超)の場合もありますし、葬儀社に具体的な費用の確認もしておくことが大切です。
費用が高くなる=会社のリスクやスタッフの特別手当となります。
新型コロナウィルス感染症での葬儀の流れ
葬儀の流れは通常通り行うか、骨葬で行うかにより違ってまいります。
通常の流れは通夜式を行い葬儀告別式を行います。
しかし、最期のお別れでは直接故人様に触れたりなどはできず、お棺の窓越しや透明の納体袋越しでのお別れとなる可能性が高いです。
こちらでは骨葬の流れについてご案内いたします。
【お迎え】病院や施設にお迎えにまいり、防護服着用のスタッフが病室や霊安室に行きご遺体をストレッチャーに乗せます。場合によってはその場でお棺に納めるケースもあります。
【火葬】斎場の予約を取り火葬を行います。規制の緩和がされておりますが、斎場での立ち合いができなかったり、人数制限などによりお別れができないケースもあります。場合によっては宗教者(お寺様など)がお経をあげるケースもあります。
【お骨上げ】収骨となります。ご遺族の立ち合いが難しい場合は葬儀社スタッフ、斎場スタッフでお骨上げを行いご遺族の元に遺骨が手渡されます。
【葬儀式】宗教者(お寺さん)などを呼び葬儀を行います。お通夜式を行うケースは少ないですが、ご遺族の考えによってはお通夜式を行っても問題ありません。祭壇などについては遺影写真やお位牌・ご遺骨を安置しお花の生花祭壇で飾り付けを行うケースもあります。
【初七日法要】一般的にはお骨上げの後に行う法要ですが、葬儀式終了の後、そのままで初七日法要を行うことが多いです。昨今より需要の増加がみられる「式中初七日法要」とは少しニュアンスが違ってまいります。
【次第終了】全ての予定が終了しご帰宅となりますが、中にはご遺族・ご親族の皆様で精進揚げ(食事)を行うケースもあります。
葬儀の流れは葬儀社やご遺族のお考えによって形式が異なりますので全てが同じということではありません。
葬儀社のアドバイスを受けることも大事ですが皆様のお考え(形式や予算面)も主張した方がよいといえます。
まとめ
こちらでは新型コロナウィルス感染症で亡くなられた方の葬儀の実態や葬儀費用・葬儀の流れについてご案内いたしました。
ただし、私が業務を行っている関西地方での経験談であり日本全国でもこのような形式だとは言い切れません。
しかし、おそらく日本全国に共通している部分も多いかと存じますのでご参考いただければと思います。
一つ確実にいえることは、もし新型コロナウィルス感染症にかかってしまい、それが原因なのかには関わらず医師よりの余命宣告が告げられた場合、葬儀社に事前相談を行い葬儀の内容や流れ・費用などをあらかじめ確認しておくといざという時に落ち着いて行動できるのは確かだといえます。