【記事監修】厚生労働省認定 一級葬祭ディレクター/中原優仁 |
目次
霊柩車と寝台車の違いについて
霊柩車は葬儀の際にご遺体を搬送する車両ですが、昨今では上の写真のような宮型霊柩車は見なくなりましたね。
また葬祭業では霊柩車以外に寝台車という車両もあり、使い分けがあったりします。
こちらでは「霊柩車」と「寝台車」の違いや歴史など霊柩車について詳しくご紹介いたします。
霊柩車や寝台車とはどんな車両?
霊柩車は「霊」に「柩(ひつぎ)」の「車」と書くことから、ご遺体やご遺体が納められている柩を搬送するための車両の総称となり、国土交通省認可の緑ナンバー車(営業用車両)です。
霊柩車の種類には、
- 宮型霊柩車
- 洋型霊柩車
- バン型霊柩車
- バス型霊柩車
- 軽自動車(バン)の霊柩車
などがあります。霊柩車の種類についてご紹介いたします。
宮型霊柩車(神輿型)
宮型霊柩車は、高級車の外車や国産車を改造し屋根の上に神社や神輿、寺院などをイメージしたものを設置し棺をその中に納めることが出来る構造になっています。白木に彫刻を施してあったり、白木に金粉や漆塗りなどを施されていたりするため、雨の日はビニールシートを被せて走行したりしていました。「だんじり(地車)」と同じような見た目になります。
洋型霊柩車(リムジン)
昨今では最も主流な霊柩車となり、ベンツやリンカーン、レクサスやクラウンなどステーションワゴンやセダンを改造し、屋根にレザーの装飾をしていたりします。また、通常サイズのショートタイプや、車両を真っ二つに切断し引き延ばしたリムジンタイプがあります。街でよく見かけます。
バン型霊柩車
寝台車でお馴染みのバン型霊柩車で、ノアやエスティマ、アルファード、ヴェルファイアなどの車両が多く、後部座席を外し、ストレッチャーを搭載しています。ストレッチャーをおろせば棺も積むことが出来、洋型と同じく街で良く見かけます。昨今では洋型霊柩車と同じくらい、出棺用霊柩車として使用されていたりします。定員は運転手を含めて3人もしくは4人乗りの車両が多いです。
バス型霊柩車
マイクロバスを改造し、バスの後方にお棺を載せるスペースがあります。人員も10人~15人程度乗れるため故人と一緒に火葬場へ迎えるのですがそこまでの需要はありません。
軽自動車型霊柩車
あまり見かけませんが、実は軽自動車のバンを改造した霊柩車も存在します。需要がまだそこまで無かったり、世間一般的に浸透していないため、軽自動車型を使用している葬儀社も少ないといえます。軽自動車で病院へのお迎えや、出棺の際の霊柩車として使用となればお客様がビックリするかもしれません。今はまだそんな時代ですが、葬儀単価も今より更に下がると思いますし、葬儀社にとっても維持費が抑えれるため、いずれ普及はすると思います。
街で走行している霊柩車を見ると、バン型は国産車で洋型は外車や国産車の高級車を使用している車両が多く見られます。
- ベンツ
- レクサス
- クラウン
- センチュリー
- リンカーン
- キャデラック
- ボルボ
などが洋型霊柩車に多く、富山県に本社を置く「光岡自動車」も良く見かけます。
霊柩車と寝台車の違いについて
宮型やセダン型・バン型などご遺体を載せる車両は霊柩車なのですが、業界では宮型や洋型などセダンタイプの車両もしくは、お棺を載せ火葬場まで向かう車両を霊柩車といいます。
昨今では出棺の際、宮型霊柩車の需要が極端に減っており一部地域を除いては洋型霊柩車が主流となりますが、寝台車(バン型)で斎場へと向かう形式も増加傾向にあります。
寝台車について
寝台車は一般的に寝台列車や、高齢者や患者を搬送するワンボックスの車両として捉えられていますが、葬儀においての寝台車はワンボックスなどのバン型の霊柩車を指しており、病院や介護施設などからご遺体を搬送する車両をいいます。
車両の登録は霊柩車と同じく「一般貨物自動車運送事業」として国土交通省より霊柩車登録の認可を受けなければなりません。もちろん緑ナンバー(8ナンバー)です。
寝台車も霊柩車ですが、業界内の言葉の使い分けとしては
- 宮型霊柩車
- 洋型(リムジン型)霊柩車
を霊柩車と呼び、
- ワンボックスなどのバン型
- 病院や施設からの搬送用車両
- ストレッチャーが付属している
- 外見の装飾の違い
などにより寝台車と呼んでいます。
しかし、昨今では寝台車を「バン型霊柩車」として使用している葬儀社も多く、理由としては霊柩車を外注する場合、宮型や洋型よりバン型の料金が安価であったり、家族葬の増加に伴いお客様が霊柩車にこだわらないということが背景にあったりします。
ご遺体や柩を搬送する車両を総称して「霊柩車」と呼び、見た目や仕様によって霊柩車や寝台車という言葉の使い分けをしています。
宮型霊柩車が減った理由について
神輿型の宮型霊柩車は稀に見かけますが、需要が減少しているのには以下の理由があります。
①コストや維持費
宮型霊柩車は木に彫刻を施すため宮大工さんなどの職人さんの技術が必要であり、洋型の霊柩車に比べ車両価格が極端に高かったりします。
また木材を用いていることからエンジンオイルや車両の整備以外にも神輿部分のメンテナンスも定期的に行わなければなりません。
昨今では昔に比べ葬儀費用の単価も下がっていることもあり、宮型霊柩車を保持している葬儀社もどんどん減っていたりします。
②仰々しく非常に目立つ
一目見れば霊柩車だと分かり、非常に派手で目立ちます。昨今では家族葬が主流となり、なるべく目立たない形式で葬儀を行いたいという方がほとんどです。
近所の方や宮型霊柩車を見かけた人からすると「死」を連想しますし、見かけたとすると縁起が良いとはいえません。
洋型やバン型であれば分かる人には分かりますが、目立たず一見霊柩車には見えませんので洋型霊柩車やバン型霊柩車の需要の増加にも納得がいきます。
③宗教・宗旨
昨今では宗教や宗旨が多様化しています。昔に比べ無宗教やキリスト教なども増加しているため宮型であれば仏教や神道以外ではあきらかに合っていないといえます。
④昭和天皇が洋型の霊柩車で出棺!?
※画像引用元:文春オンライン
1989年(平成元年)に昭和天皇の葬儀が執り行われた際、洋型霊柩車にて出棺となりました。当時ではまだまだ宮型霊柩車も現役でありましたが、おそらく他国の首脳陣も参列することから宗教色のない洋型霊柩車を選択されたのだと思います。
霊柩車や寝台車の色について
霊柩車では白もしくは黒の車両がほとんどです。喪に関する色が現在では黒ですが昔は白を多く使用されていたようです。現在でも「白装束」「白木の仏具」などの名残りがあることから一般的には白もしくは黒が採用されているケースが多いです。
しかし病院や施設へのお迎えの寝台車においては白黒以外にも「シルバー」「グレー」その他さまざまな色の車両が見かけられます。
自宅への搬送の際なるべく目立たない・霊柩車と分からない方がよいという方も多いことから地味目な色合いの車両を採用していることが多いようです。
霊柩車の歴史
大昔(大正時代)の日本では神輿に遺体を納めた柩を乗せ担いで運んでいたとされています。
その後、大八車と呼ばれるリヤカーの様な車両に屋根を取り付け、人力や牛・馬を動力とし搬送していましたが、更にその後トラックの荷台に神社や神輿のようなものを乗せ、そこから宮型霊柩車へと発展していったようです。
しかし、平成の中頃になり家族葬の増加や葬儀に対する価値観が低下し、「葬儀は盛大にするもの」という考えから「費用を抑えた小規模な葬儀をしたい」と考える方が増加し、徐々に宮型霊柩車の露出が減少していったとされます。
要因としては、
- 葬儀にお金をかけたくない
- 霊柩車は縁起が悪いという声が増えた
- 目立つため、周りに知られる
といったように、金銭面や周りに葬儀を行っていることを知られたくないという面から、霊柩車に見えない洋型やバン型が徐々に普及していき、宮型霊柩車の極端に需要が減少していったようです。
葬儀社側から見ても、宮型は車両本体価格が高く木材などを使用しているため維持や手入れが大変で、その上葬儀の単価が下がってきているからという声もあります。
そういったことから、シンプルな改造を施した洋型霊柩車の普及が進んで行き、棺や人を乗せる事が出来るバン型霊柩車(寝台車)やバス型霊柩車、そして今では軽自動車型が出てきているという流れになっています。
「葬儀にお金をかけたくない」「周りに知られたくない」というのが一番の要因だと言え、現在でも宮型霊柩車は走っていますが、滅多に見かけなく手放した葬儀社も多いようです。
確かに霊柩車を外注する場合、バン型⇒洋型⇒宮型の順に費用がかかりますし、購入する場合も宮型は大変高価になりますので、霊柩車事情はすごく理解できます。
大八車型は現在でもごくごく稀にある!
上記画像のような大八車に神輿を乗せたような霊柩車は資料館などで保存しているケースもありますが、地方の自治体や葬儀社が保存しているケースもごくごく稀にあります。
数年前(令和4年)に大阪府の某地域で葬儀が行われ地域の倉庫に保管されていた大八車タイプの霊柩車にて火葬場まで隣組や役員の方達で斎場まで野辺の送りをしている風景を目の当たりにしてビックリしました。
通常は霊柩車での出棺のようですが、村中の一部の方はこのような形式や風習がまだ残っているようです。写真に収められなかったのは残念ですが非常に勉強になった日でした。
出棺時霊柩車がクラクションを鳴らす理由について
自宅や葬儀場から出棺をする際、クラクションを「プワ~~~ン(アリーナホーン)」と長く鳴らしている光景を見たことがあると思います。
明確な理由は無いようですが、諸説として
- 故人を偲び弔う
- 邪気を払う
- 最後のお別れの合図
などといわれています。葬列を組んでの出棺が行われていた時代では鐘や太鼓などを鳴らして出棺していましたので、霊柩車の普及とともにクラクションが楽器の代わりだともいわれています。
昨今では近隣の方の迷惑や、周りに葬儀を知られたくないなどの理由からクラクションを鳴らさないことも多くなっています。特に都市部や住宅地では近隣住民からの苦情が殺到するため、クラクションを鳴らしての出棺はほとんどありません。
霊柩車は一般人が運転してもよい?
霊柩車が格好良く見えるので、レンタカーで自分で運転を行いドライブしてみたいのですが可能ですか?
という若者の相談でした。
霊柩車の運転自体は普通自動車の免許があればドライブすることは可能です。しかし、業者向けのリースなどはありますが、霊柩車を置いているレンタカー業者が無いです。レンタカー屋に置いても一般客からは需要無いですからね。。。
可能だとすれば、親族や親戚に不幸があり葬儀社のお迎えに立ち会った際、その葬儀社に「どうしても自分で運転してあげたい・・・」などと伝えれば、もしかするとチャンスがあるかもしれません。
しかし、事故などを起こすと金銭面では保険で何とかなるかもしれませんが、運転させたスタッフに責任が問われますので運転させてくれるスタッフはあまりいないでしょう。
霊柩車と寝台車の違いまとめ
こちらでは霊柩車と寝台車の違いや車種・色の違いについてご紹介いたしました。
霊柩車はご遺体を搬送する車両の総称なのですが、お棺を載せて火葬場へと運ぶ車両を霊柩車、病院や介護施設へのお迎えに行く車両を寝台車として言葉の使い分けをしていたりします。
霊柩車には宮型・洋型・バン型・バス型・軽自動車型がありますが昨今では宮型霊柩車は仰々しく見た目が派手なことからほとんど見かけません。
家族葬の増加や時代の流れとともに儀式ばった形式を避ける方が増加しているということに比例しているといえます。