![]() 一級葬祭ディレクター/中原優仁 |
目次
六文銭(六道銭)とは?
仏教の世界では「三途の川の渡し賃」といわれており、葬儀で通夜式の前に行う納棺の儀式の際にお棺の中に納める副葬品の一つです。
読み方はそれぞれ、
- 六文銭=「ろくもんせん」
- 六道銭=「ろくどうせん」
と読み、六連銭(ろくれんせん)と呼ばれることもありますが一般的には「ろくもんせん」です。
字の通り六枚(六文)の金銭(銭貨)となり副葬品(ご遺体とともに棺に納める品物)のひとつです。地域によってお葬式でのご納棺の儀式の際、お棺に入れるという風習があります。
こちらでは六文銭の意味や納めることの理由についてご紹介いたします。
三途の川(さんずのかわ)の渡し賃とは?
三途の川(さんずのかわ)とは仏教において、「この世」と「あの世」を分け隔てているとされている川です。
「三途(さんず)」とは仏教において死後の世界である六道の内の「畜生道」「餓鬼道」「地獄道」の三道を意味しており、三悪趣(さんあくしゅ)や三悪道(さんあくどう)ともいわれます。
三途の川を渡る方法が三種類あるとされています。
- 善人は橋を安全に渡ることができる
- 罪の軽い罪人は「山水瀬(さんすいせ)」と呼ばれる浅瀬を歩いて渡れる
- 罪の重い罪人は流れの激しい深瀬を苦労して渡らなければならない
というようないい伝えがあったため、三途の川と呼ばれるようになったとされています。
この考えが平安時代末期に「渡し船」を渡せば船で渡れるという考えに変わったことにより、
六文銭=三途の川の渡し賃
といういわれになったとされています。
また六文銭にはさまざまな考えや諸説があり、仏教では死後に生前の行いによって六道(天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道)のいずれかに生まれ変わるとされていて、六道のそれぞれを六体の地蔵菩薩(六地蔵)に救ってもらうため一文づつお渡しする(お供え)といういわれなどもあり、そこからお柩に納める風習ができたとされています。
また、三途の川のことを「葬頭河(そうずか)」「三途河(しょうずか)」「三瀬川(みつせがわ)」「渡り川(わたりがわ)」とも称されたりします。
六文銭って現在ではいくら?
三途の川の渡し賃が六文とといわれていますが、現代のお金の金額では「一文30円程度」とされていますので、六文では「200円程度」になるとされています。
こう見ると六文銭はそこまで高額では無く、その当時でも気軽に出せる金額だといえます。
「早起きは三文の徳」ということわざがありますが、こちらの三文もお金を表しています。早起きをすれば少しばかり(ごくわずか)なお得(利益)があるという意味です。
どんなお金を入れるのか?
昨今では火葬場の副葬品についての規制が厳しくなり本物の金銭を入れることが禁止されている斎場もあります。そこで代替品として「紙にプリントされた六文銭」「木製の六文銭」「アルミ製」「パラフィン製(蝋燭素材)」「植物由来の素材(コーンスターチ)製」などでリアルに模された六文銭を納めることが主流になっています。
中には本物の「永楽通宝」や「寛永通宝」を出してくる方もいらっしゃれば現在のお金を納めたいという方もいらっしゃいます。
本当は燃えないものを納めることができない昨今ではありますが、葬儀社や火葬場が黙認しているケースもあり、どうしてもお棺の中に納めたいという場合は葬儀社に確認しておきましょう。
お柩のどこに入れるのか?
納棺する際、葬儀社が白の仏衣を準備するのですがセットの中に頭蛇袋(ずたぶくろ)という白い袋があります。その中に紙製でコピーされた六文銭が入った小袋があり、その中に金銭を納めて故人様の胸元や手に持たせてあげることが一般的です。
六文銭をお守りに?
ひと昔前は金銭をお棺に納めて火葬を行い、そのままお金が残るのでお守り代わりに財布に入れたり保管していたりというケースも多くありましたが昨今ではあまり見かけません。
しかし、お守り代わりに持っておくことは自由ですが、火葬場や葬儀社に確認しておきましょう。
六文銭を入れない宗教もある!
浄土真宗では亡くなるとすぐに阿弥陀如来様のお力により、お浄土へと還帰(仏の世界に生まれ変わる)とされているため、三途の川を渡る・四十九日間旅旅をするという考えがなく六文銭を納める必要はありません。
しかし浄土真宗であっても檀家は三途の川を渡る・六文銭を納めるというイメージを持っている方も多く、宗旨問わず納める場合もあったりします。
海外でも似たような風習がある!
また海外でもこの世とあの世を隔てられている川があるという考えもありヨーロッパやアジアなどにおいても六文銭という概念はないですがお金やお金を模したものを納めるケースも多くあります。
私の経験談ですが中国や韓国・東南アジアの一部ではお金を模した紙を大量に納めるケースもあります。死者にお金を持たせるという考えは日本だけではなく他の国においても浸透している風習だといえます。
一般的に硬貨を納めることは、骨上げに支障が出るため禁止されている斎場が多く見受けられますが、ご遺体の身体から離して納める分には黙認している火葬場があったりもします。
六文銭は真田幸村の家紋?
真田幸村や真田信繁の名前で知られている真田家の家紋が六文銭です。
当時、三途の川の渡し賃が六文だと強く信じられていたため、戦いにおいていつ死んでもいいようにという、武士にとってふさわしい強い心構えで戦いに臨んでいたとされています。
また、武将を初め武士や足軽などが、衣服の裾に六文銭を縫い付けたともいわれていて「真田銭」とも呼ばれたりしています。ちなみに東信濃の豪族である滋野(海野)氏の代表家紋も六文銭となります。
六文銭のまとめ
こちらでは六文銭についてご紹介させて頂きました。
六文銭とは三途の川の渡し賃であり、安全にあの世に渡れるようにという願いを込めて現在では根強い風習となっていることが分かります。
昨今では本物の金銭を納めることが難しいケースもありますが、黙認している葬儀社や火葬場もあるため納める場合は確認が必要です。
また海外においてもお金をお棺に納めるという風習があったりしますので、死者にお金を持たせるという考えは日本だけではないことが分かります。
死後の世界というのは亡くなったものにしかわからなく、信じていない方も当然多いのですが由来や言い伝えなどを知ってもらうことで、日本の歴史や文化・風習などに興味を持って頂ければと日々努力しております。